近年は生涯自分の住居を持たずに、借家に住み続ける人が増えていますが、住居の貸借における権利関係などの法的な規定を定めたものが「借地借家法」です。
借地借家法とは?どんな法律?
借地借家法は建物と土地における賃貸借契約の規定を定めたものですが、賃借人は賃貸人に比べて弱い立場にあることから、経済的に不利にならないように保護するため、民法の規定を修正したり、補ったりされています。
なお、借地借家法は建物の賃貸借に限定されており、「使用貸借」には適用されません。
使用貸借は無償で借りていることから、法律で保護する必要がないからです。
どんな場合に適用されるのか?借地借家法の適用例
例えば、AはB所有の建物に居住することを目的として、Bとの間で期間3年、賃料月額15万円とする賃貸借契約を締結したとします。
①賃貸契約の更新
賃貸借において、3年という期間が定められているため、賃貸人Aないし賃借人Bが期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知をしなかった時は、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(法定更新)。
借地借家法第26条1項
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
(引用元:借地借家法第26条│Wikibooks)
従って、法定更新後の契約は期間の定めがなく、賃料月額は15万円ということになります。
②解約の申入れ
賃貸人Bは正当の事由がない限り、解約の申入れをすることができません。正当な事由としては以下のことなどがあります。
- Bに賃貸住居を使用しなければならない正当事由がある
- 十分な立退料、及び新たな住居を提供する
- 建物が老朽化しており、使用に耐えない状況にある
- 賃借人が賃料の支払いを怠っている
- ペットの飼育や自宅開業など、契約上の禁止条項に違反している
借地借家法第28条
借地借家法第28条:建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
(引用元:借地借家法第28条│Wikibooks)
③第三者への対抗
仮に、賃貸人Bが第三者に対して建物を譲渡した場合、賃借人Aの賃借契約がどうなるのかという問題が生じます。
借地借家法では、建物の賃貸借は建物の「引渡し」があった時点で、その建物の物権を取得した者に対する効力が生じるとしています。
従って、そこに「住んでいれば」引渡しが行われたことになり、第三者に対して対抗できます。
借地借家法第31条1項
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
(引用元:借地借家法第31条│Wikibooks)
④造作買取請求
期間満了や解約の申入れによって賃貸借が終了する場合、賃借人Aが賃貸人Bの同意を得て建物に造作を付加してあると(畳、建具など)、AはBに対して時価での造作の買取を請求できます。
借地借家法第33条1項
建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
(引用元:借地借家法第33条│Wikibooks)
なお、この規定は賃借人から第三者に転借された場合にも準用されるため、転借人も賃貸人に対して造作買取請求権を有しています。
土地や建物は生活していく上で最も重要となるものです。その土地や建物の使用が不安定な状態にあると、安心して暮らすことができません。
特にお金借りたい人などは、借地借家法について勉強しておいた方が、自分自身の身を守ることにも繋がります。
原則、借地借家法は借地人、借家人を守ることに重点が置かれています。