介護保険は高齢者のものと思っているせいか、若い人には介護保険の内容を知らない人が少なくありません。
また、介護保険の保険料を支払っている人でさえ、保険料がどのように決められているのかを理解していない人が多くいます。
介護保険制度とはどんな制度なのか?
介護保険制度は加齢を起因とする疾病などによって介護が必要となった人を支えることを目的としています。
対象者は満65歳以上の第1号被保険者と、満40〜65歳未満の公的医療保険に加入している第2号被保険者であり、介護保険法によって加入が義務付けられています。
従って、40歳になると第2号被保険者としての介護保険料の納入義務が発生し、65歳になると第1号被保険者としての納入義務が続くことになります。
なお、正確には満40歳を迎える日の前日が属する月から支払いが起きます。
・誕生日が8月1日の人:7月分から納付
・誕生日が8月2日の人:8月分から納付
なお、第1号被保険者は要介護・要支援の状態になれば介護サービスを受けられますが、第2号被保険者は指定の特定疾病に罹患した場合のみサービスを受けられます。
介護保険料費用負担の内訳
介護事業に要する費用の財源の内訳は以下になっています。
・50%:被保険者の保険料
・25%:国
・12.5%:都道府県
・12.5%:市町村
第1号被保険者と第2号被保険者の負担比率
介護保険の保険料に関しては、第1号と第2号の被保険者における負担比率が事前に決められています。比率は以下の式で算出されます。
最初に、第2号被保険者の負担比率を下記の計算式で算出します。
・第2号被保険者の保険料負担比率=第2号被保険者数÷第1号・2号被保険者合計数÷2×100
次に、第1号被保険者の負担比率を下記の計算式で算出します。
・第1号被保険者の負担比率=50%-第2号被保険者の保険料負担比率
例えば、第2号被保険者の負担比率が30%の場合は、第1号被保険者の負担比率は20%になります。
現在の負担比率は第1号被保険者22%、第2号被保険者28%になっています。
介護保険料の計算式
保険料は第1号と第2号の被保険者では異なった計算によって金額が決められています。
①第1号被保険者
第1号被保険者が負担する保険料は市町村民税の課税状況(前年の所得)に応じて設定されます。
そして、金額は保険料基準額に介護保険料率を乗じて算出されますが、介護サービスの利用者数などの影響から、保険料基準額や介護保険料率は市区町村ごとに異なるため、正確な計算式は各市町村の窓口で確認する必要があります。
例えば、東京都板橋区では以下のようになっています。
所得段階が1段階から14段階まで分かれており、前年中の合計所得金額が125万円以上200万円未満の人は第7段階に該当し、年間の保険料は80,700円です。
なお、介護保険の事業計画は3年ごとに見直しがあり、保険料も同時に改定されます。
ちなみに、現時点の全国平均介護保険料の月額は約5,600円ですが、2025年には約8,200円なることが見込まれるため、20歳からの介護保険への加入が検討されています。
②第2号被保険者
第2号被保険者の保険料は加入している健康保険によって算出方法が異なります。
国民健康保険の場合
国民健康保険に加入している人の介護保険料は、前年の所得に応じて計算されます。
・保険料=所得割+均等割+平等割+資産割
各割合は市区町村ごとに異なるため、市区町村の窓口で確認するしかありません。
・所得割:被保険者(または世帯)の前年所得に応じて算出
・均等割:被保険者ごとに算出
・平等割:世帯ごとに算出
・資産割:土地や家屋などの保有資産に応じて算出
国民健康保険以外の健康保険の場合
第2号被保険者の場合は、給与や賞与に介護保険料率を乗じて保険料が算出されます。
・保険料=(標準報酬月額+標準賞与額)×保険料率
・標準報酬月額:通常、4〜6月に支払われた給与の平均額
・標準賞与額:賞与から1,000円未満の端数を切り捨てた額(上限150万円)
・保険料率:加入している健康保険の種類による
介護保険料の支払方法は?
被保険者によって以下の方法で保険料を支払います。
第1号被保険者
・年額18万円(月額1万5,000円)以上の年金を継続して受給している人は、年金(老齢年金・遺族年金・障害年金)から介護保険料が徴収(天引き)されます。
・年金から天引きされない人は、納付書や口座振替で保険料を納付します。
第2号被保険者
・国民健康保険に加入している人は、口座振替や納付書で納付します。
・国民健康保険以外の健康保険に加入している人は、健康保険料に上乗せされる形で給与から天引きされます。
・健康保険の被保険者の扶養者(配偶者など)は、第2号被保険者の保険料で賄われるため、個別に納付する必要はありません。
サラリーマンの夫が30代で、扶養される妻が40代の場合は、夫の収入から妻の介護保険料が徴収されます。その後、夫が40歳を迎えると、夫が保険料を徴収され、妻は保険料の徴収が無くなります。
介護保険料を滞納したらどうなるのか?
介護保険料の滞納があった場合は延滞金が加算されるとともに、滞納処分を課されることがあります。
さらに、滞納期間によっては保険給付が制限される場合もあります。
介護保険料を1年以上滞納
介護サービスに対する利用料が全額自己負担となり、申請によって利用料の8〜9割が還付されます。
介護保険料を1年6ヶ月以上の滞納
サービス利用料が全額自己負担となり、申請によって自己負担額から延滞分の保険料と利用料の1〜2割を差し引かれた額が還付されます。
介護保険料を2年以上の滞納
利用料が3割負担に引き上げられます。
ちなみに、滞納した保険料を遡って納められる期間は過去2年分までと定められています。
介護保険料についてのまとめ
介護保険料は住んでいる地域や職業、年齢、経済状況に合わせて均等な負担になるように考慮されています。
納入義務は40歳以上からになります。大学生の人がプロミス学生などでカードローンを借りて、保険料を支払っている人が稀にいますが、介護保険料は学生では発生しません。
なお、何らかの事情で保険料の納付が困難になった場合は、速やかに市区町村の担当窓口に相談すべきです。